天井桟敷日記

「天井桟敷からの風景」姉妹版

第4作「我が心の良くて」完結

利一の日記
ええ経験したなあ。事の起こりはこの商品。

資産運用支援プラン
対象商品と定期預金の同時お申し込みで、定期預金(スーパー定期・外貨定期預金)《3カ月》の金利を優遇いたします。

ええっ!今時、定期金利が3%も付くんかいな。そやけど3ヶ月だけやんか。
いえ、3ヶ月毎に預け替えするお客様もいらっしゃいます。
ふーん。とりあえず「次世代通信網なんちゃら投信」とセットでやってみよか。

と、オッチョコチョイ俺は申し込んでしもた。銀行を終えてイオン買い物、ついでにイオン銀行。ここでも似たような商品を売ってたな。

しっかり運用セットNeo
投資信託と定期預金かセットで金利がお得

お客さん、これは損しまっせ。購入手数料2.2%の投信を買うて定期の金利が7%3ヶ月付いても投信購入手数料の方が高くつきます。

イオン銀行のお兄さんは正直やった。自分とこに不利な事実もちゃんと説明してくれる。この投信の購入手数料が信託銀行3..3%、イオン銀行は2.2%と安いのもさすがや。
でも、ちょっと気になってSBI証券サイトを覗いたらなんとノーロード→購入手数料0%!
腹立ったなあ、なんとかせなあかん。投信+定期取り消してくれええ。

イオンカードセレクトのご利用などで普通預金金利が最大年0.10%

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律子の日記
あのおっさん、なかなかやるわねー。

証券・金融商品あっせん相談センター(略称:FINMACフィンマック)は、株や投資信託、FXなど金融商品の取引に関するトラブルについて、金融商品取引業者の顧客(金融商品取引の利用者顧客)からご相談や苦情を受け付け、公正・中立な立場で解決を図る金融ADR機関です。

に相談して当支店管理担当課長に電話して来てラチが開かないと見るや本店お客様相談センターにも電話するなんて。そこまでやるとは思いもよらへんかった。
本店から穏便に収めるよう連絡があって支店次長が動かなアカンようになってもた。結局、次長があのおっさんに投信購入取り消し出来ますと電話せざるを得んかった。

ネット証券が大抵の投信を購入手数料無料て売ってるとはウチも知らんかった、認識が甘かった。ごめんなさいと謝ったら大抵のお客さんはしゃあないなとなるところを公的機関に連絡、本店にねじ込むんやもんなあ。
そいで今日は当行取り扱い商品の中からノーロード投信を自分で見つけ出してNISA非課税購入。ウチもええ経験になった、長いお付き合いをさせて貰おう。
投信購入のついでにおひとりさま信託を紹介したら、かなり興味を持ってたな、これはいつか成約いけるかも。

委任者(本人)が第三者に対し、関係者への訃報連絡、葬儀、納骨、埋葬に関する事務、住居内の遺品整理、退院・退所手続き、亡くなった後の諸手続き(健康保険、公的年金等の資格抹消手続き、公共サービスの解約等)を頼むためには、生前に代理権を付与して、死後事務を委任する契約(死後事務委任契約)を締結しておく必要があります。

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スナック幸代にて
利一さん、今日は飲み過ぎよ
うるさい、俺は気分がええんや。あの❇︎信託銀行に勝ったんや俺は。本店に電話して出るとこに出るぞおお言うたら次長が頭下げて電話してきよった。はははは、銀行をいてこますオトコなんかおらへんやろ
もーう、今日はその話しばっかりや。馴染みの客やし高校同級生以来の仲やから辛抱して聞いてあげてんのよ、ええ加減にしてーなー。する話しいうたら株で儲けた損したとか損得とダメ虎野球ばっかしや。利一、お前の人生には損得と好き嫌いしか無いのんかあ。



幸代は高校時代に俺にラブレターをくれたオンナ。あの時俺は恥ずかしくて無視してもたけど、相手にしてやってたら俺の人生、どないなってたかなあ。結局、俺はオンナとは無縁の人生やった。今からでもええから幸代とナニしよか、ほほほほほ。

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幸代の日記

あの頃は若かったなあ、ウチも。勉強もスポーツもできる利一に単純に憧れてラブレター出してもた。今思うと、目から火が出るほど恥ずかしいし、いや、腹が立つほど悔しいわ。なんであんなんを好きになってもたんや。損得と好き嫌いしか考えへん自慢したがりの嫌なじじいやんか。

そういえばウチの店に来る男はだいたい自慢したがり。よほど家で話しを聞いて貰われへんねんやろ、店に来たら、こんな仕事をしたぞいくら儲けたとかオンナに惚れられたとかそんなんばっかりや。
でもなあ、コロナでエライ目におうたからお客さんの有り難みが身に沁みてるわ。どんな人でも客は客。こんな時期に銭を使うてわざわざ来てくれはるんやもん。そやから親身に聞いて真心で相槌を打たなアカンのや。

 

親鸞聖人の言葉を集めた『歎異抄』の第13章には、次のような言葉があります。
 「わがこころのよくて、ころさぬにはあらず。また害せじとおもうとも、百人千人をころすこともあるべし」 私の心がよいから私は人を殺さないのではない。縁がないから殺さないだけであって、縁が熟せば、人は百人でも千人でも殺すかもしれない。人は縁によってどのような行いをもしてしまう、そういう存在なのだ、と親鸞聖人は指摘されています。
 浄土真宗の宗祖である親鸞聖人が、「人を殺してはいけない」と諭すのではなく、なんとおどろくべきことに、「縁さえ熟せば私も人を殺してしまうかもしれない」と告白されるのです。ここに、人間存在の持つ闇を、深い悲しみをもってじっと見つめている親鸞聖人がおられます。

「わがこころのよくて、ころさぬにはあらず」この歳になってようやくこの言葉の味がわかるようになった。若いときはええこともわるいこともみんな自分のせい、自分の力。そやないんや、自分の力は半分いや三割以下。みーんなご縁やねん。若いときに惚れて結婚、うまいこといかんですったもんだして離婚、相手のせいにしてたけどウチもわるかった。いや、ご縁がなかったんやなあ、誰のせいでもないんや。

ウチのお父ちゃん、戦争に取られて支那へ行ったらしい。戦争のことはひとことも言わんかったけど終戦後は国鉄に勤めて踏切番をずっと務めてた。朝晩
は仏壇を拝んで念仏唱えてた。ひょっとしたら歎異抄読んでたかも。わがこころのよくて、ころさぬにはあらず

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