天井桟敷日記

「天井桟敷からの風景」姉妹版

音楽を世界に連れ出そう

映画を見て非常に気に入ったのですぐに原作購入。

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ところが下巻の最初あたりで「神の数式」物理学フィーバーに踊ってしまい長く中断。数日前から再開して昨日読了。
映画もよかったけれど原作は登場人物の心理、音楽の描写が長けている←言語表現だから当然か。
そしてキーワードは「音楽を世界に連れ出す」。「蜜蜂と遠雷 音楽 連れ出す」検索でいくつか記事を読んで次の記事が最も的確だった。


塵くんの演奏中、もうひとりのコンテスタント、栄伝亜夜ちゃんとの間に、こんな会話(リアルではない)が展開されます。
 
「僕ね、ホフマン先生と約束したんだ。(中略)音楽を、世界に連れ出すって約束。(中略)今の世界は、いろんな音に溢れているけど、音楽は箱の中に閉じ込められている。本当は、昔は世界中が音楽で満ちていたのにって」
 
「ああ、分かるわ。自然の中から音楽を聞き取って書きとめていたのに、今は誰も自然の中に音楽を聞かなくなって、自分たちの耳の中に閉じ込めているのね。それが音楽だと思っているのよね」(これは亜夜ちゃん)
 
「そう。だから、閉じ込められた音楽を元いた場所に返そうって話してたの。」
 
塵くんは、ホフマン先生と野外で弾いてみたり、いろいろ試してみますが、どうやらそういうことでもなく、どうしたらいいのかわからないまま、ホフマン先生は亡くなります。

映画では「音楽を箱の中から世界に連れ出す」というのはあったかもしれないが記憶にないなあ。我が感想は


余計な説明がなく展開快調、リズミカル。暗闇の中で快適音響、音楽映画にありがちなとってつけたような音楽ではなくドラマに血肉化した演奏シーンがよかった。とりわけバルトークP協奏曲3番が効果的、ドラマとの絡みは忘れ難し。またプロコフィエフ P協奏曲3番によるエンディングも秀逸。

映画に原因があるのか我が鑑賞能力の問題なのか不明だが原作のキーワード「音楽を世界に連れ出す」を見落としていたのは返す返すも残念、Amazonプライム・ビデオで観られるようになるのがベストだが、シブチンがDVD購入を考えるぐらい残念や。
そして改めて原作文庫本の帯を見ると→「私はまだ音楽の神様に愛されているだろうか?」なる惹句。こんなの原作に一行も出てないぞ。ミスリードや、売らんがための策略や、これこそ「音楽を箱の中に閉じ込める」実例であった。金儲けの策略に惑わされず、もっと自由を、自由に音楽を愉悦しよう。