天井桟敷日記

「天井桟敷からの風景」姉妹版

第6作「愛のレッスン」

健太郎の日記 自己愛と自尊心

 

今のマイブームはKindle読み放題とNHKオンデマンド。どちらも無料ではなくて有料いずれも月額980円。しぶちん俺にしては結構な出費だが、どちらもそれなりの見返りがあるので納得している。

Kindleを使って未明の読書→昼間はテレビNHKオンデマンド/100分名著、大河ドラマその他で暇人暇潰しの毎日だ。
そこで今朝Kindleしていたら自己愛と自尊心は全く異なることを教えられた。


自己愛自己中の俺は以前からなんとかこの自己愛を止揚することは出来ないかと気になっていたのだが、このルソー100名著に触れて刮目、眼から鱗→そうか、自尊心を持たない自己愛は存在を許されるのだ。自己愛を保ったままで成仏できそうや。

自尊心は自己愛に加えて他人と自分を比べて「俺はエライんだ」とするココロ。ルソーは他人と比べるなと諭してくれる、更には「足るを知る=知足」まで言うてるやないか。そうか、他人と自分を比べない自己愛は暴走リスクが無いんだ、ああこれで安心して自己愛に浸れるわ。そして、更には自己愛は他人への愛につながるとルソーは言う。

以上をまとめると
自己愛と自尊心とは全く異なる。それどころか他人への苛立ちや憎しみは自尊心から生まれる。自尊心は自分と他人を比べることに根拠を持つのだから、比べるあまり他人に苛立ちを覚えたり更には憎んだりすることになる。

これは美枝子に言うてやらなアカンな。あいつはいっつも他人と自分を比べとる。比べて自分が上や下やと騒いどる。そやから人を妬んだり恨んだりばっかり。もうええ歳になったんやから自尊心を捨てよ、自己愛に生きよ。

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美枝子と健太郎 横展開と縦穴掘り


また、屁理屈や。自己愛と自尊心は異なるやて。
なんのことかようわからんわ、ウチ。
人と自分を比べるから妬んだり恨んだりするんやて。
そやけど人と付き合うたらその人と自分を比べるのは当たり前やん。この人アカンなとか凄いなとかええとか悪いとか思て付き合い方を変えるやろ。
あんたはな、屁理屈捏ねすぎ。好きでやっとるんやからしゃあないけど、そんな屁理屈捏ねて何かええことあるのん?

そんなこと訊かれたら困るけど、自分の内面が豊かになるやん。お前は生活だけが人生やと思てるけど違うぞ。人生=生活+人生、生活は本当の自分=人生を生きるための手段なんや。

ワッハハハハ、またそれか。ウチは生活だけで結構。本当の自分なんかイラン。自己愛もなんのことやらワカラン。だいたい、愛するよりも愛される方が気持ちエエ。
あんた、ウチを愛してくれとうやろ、それで十分や。
ホンマはあんたと一緒に美味しいもの食べに行ったり名所や綺麗なもの観に行ったりしたいけど、あんた、引きこもりになってしもたから堪忍したるわ。
その代わりウチは友だちと一緒に行くで。
女はトクやなあ、こうして横展開気楽にできるもん、ハハハハ、男は損。屁理屈捏ねて縦穴掘りばっかり、ご愁傷さま。

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愛のレッスン その3
健太郎の日記 縦穴掘りの理由は死

女は横展開、男は縦穴掘りか。うまいこと言うやんか、美枝子のやつ、
縦穴掘りのついでに俺のモットー「人を愛しても信じはしない」も言いたかったんやけどやめた。
信じたら裏切られるというのもあるけど、信じたら信じられた方の負担になる、だから俺は人を愛しても信じはしない。ダメ虎を愛しても信じたらアカン。

こんなんも美枝子に言わせたらまた屁理屈かあやろな。愛することと信じることの違いなんかナンセンス、ウチは愛するよりも愛される方が気持ちエエ、でまた却下や。
で、俺、考えたんや。美枝子のやつ、なんであんなに気楽に極楽とんぼ出来るかを。

あいつ、自分が死ぬことをこれっぽっちも考えてないんや。人間いつかは必ず死ぬ、そんなの当たり前、そやから考えてもしゃあない、そない思てるんや多分。

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わかったぞ、俺が縦穴掘り→引きこもりになった理由が。
死ぬのは大嫌い、そやけどいつか必ず死ななアカン。なんでやねん。だから俺は納得して死にたいんや、そしてまた、生きる意味、理由もわかりたい。これが俺の縦穴掘りやったんや。

健太郎の日記 オラは死んじまっただ

 

あれから十年。俺は三年前に他界した、享年79歳。ちょっと早すぎたやんかあ、神さま。
でも毎晩飲んでたもんなあ、糖尿で20日間入院、退院後しばらくは三拍子→飲酒しては二日休みが二拍子、遂には毎日/休肝日なしになってもたのが祟ったのや。

 

美枝子がアルツハイマー発症、俺が先に死んではイカン、認知症が進むあいつが一人でもなんとかやっていけるようにと三本柱→任意後見×サ高住×ケアマネ探しに奮闘。
夫婦で入居できるサ高住を散々探しまくって転居、頼れる任意後見をこれまた探しまくってケアマネ及びサ高住との連携三本柱ができて、俺が先に逝っても大丈夫と安心できたのがこの世の良き思い出になった。神さま、俺は自己愛を貫いたで。三本柱確立も死後事務委任もみーんな自分のためやったわいな。

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人が亡くなると、葬儀や遺品整理、役所への届出など様々な手続が必要になります。このような死後事務を委任する契約が「死後事務委任契約」です。財産管理委任契約や任意後見契約は原則として本人の死亡によって終了しますし、これらの事項は遺言で定めることもできませんので、別に死後事務委任契約を締結しておく必要があるのです。