生はいとしき蜃気楼 その2
美枝子の日記
高校時代はステキやったんやけどなあ。勉強も運動もできてウチらの憧れの的やったんや。思い切ってラブレター出して、健太郎が東京の大学に行ってからは遠距離恋愛。カラダ張ったでええ、ウチは。
その甲斐あって27でめでたくゴールイン。幸せやった。仕事と飲み会で帰りは毎日午前様。ウチは専業主婦して懸命に節約、公団分譲に当たったのもラッキーやった。
健太郎はそんなに出世せえへんかったけどまじめに定年まで勤めあげた。エラかった。ハッピーリタイアしたら二人で世界一周!なんて夢も話した。
そやけど定年後は全くの引きこもり。最初の半年ぐらいはリハビリ期間と思たけど、あれからずうっとどこにも行かず誰とも会わず一人で音楽、読書、テレビばっかし。
子どもでもおったら、ちごてたかもなあ。二人の切実な共同体験が無いもんなウチら。ウチにとっては単なる憧れ、あいつにとってはハウスキーパー兼欲望処理対象←これもとっくにオワッて単なる家政婦かああ。
どないしたらええねん。この歳になって今さらキャラ変わらんしなあ。
自分がどういう「立場」でどういう「役」を果たしているのかにこだわるあまり、自分の本来の感受性ではなく「上司」「学生」などを演じ、さらにその役割が自分のアイデンティティだと思い込んでしまう。それが「立場主義」です。その世界にいる限り、自分を大切にするのは難し https://t.co/uBBj8s3zCY
— 土曜日 (@doyoubi) 2020年7月18日