天井桟敷日記

「天井桟敷からの風景」姉妹版

54年目の初恋 最終回

同学年会

幸代からも何の連絡がないまま来てしもた同学年会当日。50人ぐらい集まっていたけど幸代も来ていない。幹事に訊いたら都合わるく欠席とのこと、ついでに和子のことも訊ねたらニタっと笑って何にも連絡ないけど当然に来ないという。なんでニタっと笑うねんこいつ、幸代め何か喋ったな。


そんなことで怒ってもしゃあない、グッと我慢してまずビール、立て続けに二杯。飲むほどに自己嫌悪→ああ、なんであんなにせっかちに書いたんや、「一人暮らしがさみしい、電話くれ」なんて。思えば60年近く喋ったことはないんやで、彼女が俺のことをどう思ってるか何にもわからないのに、あ、嫌われてたんや俺は。と、ワイン、日本酒、焼酎を手酌て重ねてしもた。

 

いつしか宴はカラオケ大会に。誰かがサザンを歌い出した。

その歌詞が引っかかってしもた。


幸代に「下心見え見え」と言われたもんなあ。思えば俺の人生、下心ばっかりやった。何をするのも下心、明日のために今日は我慢と努力。大切なのは「いま、ここ」なのにそれを見逃して明日のために今日は下心。せっかく初恋の彼女に逢える、口をきけるチャンスか来たのにフイにしてもた、アホやあ下心。

 

いつしか俺は眠ってしまった。気づくともう誰もいない。いや、誰かの膝枕。そこに居たのは和子、彼女やった。和子は艶然と微笑んだ、そして「起きた?」と口を開いた。