天井桟敷日記

「天井桟敷からの風景」姉妹版

愛妻守銭奴リヒアルト・シュトラウス

作曲家加藤昌則が毎年豊中で語ってくれる

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略してここクラ。昨日が今年度最終回。


開講前のテロップで作曲家たちのエピソードなどを紹介してくれるのだが、アルマ・マーラーがR.シュトラウス守銭奴と貶しているとのこと。ホンマかいなと検索したら


マーラー夫人であったアルマ(1879~1964)はR.シュトラウスを嫌っていたようで、著書(「グスタフ・マーラー―愛と苦悩の回想」アルマ・マーラー・ヴェルフル著、石井 宏・訳(中公文庫)中央公論社)の中で、R.シュトラウスを金や名誉目当ての俗物呼ばわりしています。もっとも、このアルマの著書は、ナチス時代にマーラーが抹殺されるのに抵抗して書かれており、ナチス支配下で「帝国音楽院総裁」に祭り上げられたR.シュトラウスを「仮想敵」とみなして書かれているためでしょう。

なるほど出所はアルマの著者やなと思いつつセカンドソースにも当たろうと検索を続けたら


シュトラウスは、19世紀後半から20世紀にかけて活躍した、後期ロマン派を代表する大作曲家だったわけですが、実は彼には、“守銭奴”という、あまりよろしくないイメージがつきまとっていました。
ギャラさえ良ければどんな仕事でも受けてしまうところがあったからです。 


シュトラウス守銭奴ぶりをうかがわせる有名なエピソードに、アメリカ公演の際にデパートで演奏した、という話があります。
当時のドイツの人々は、国を代表する芸術家が金のためにそんなところで演奏するなんてみっともない、と思ったのでしょう。
シュトラウスは、そんな批判に対して、「妻子のために稼ぐのが、やましいことでしょうか」と、平然と返したといわれています。 
https://www.denon.jp/jp/blog/3707/index.html


そうやその通りや、愛する妻子のために銭を稼いでどこが悪い、と先日らららクラシックが伝えていた悪妻パウリーネを思い出した。

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1887年、リヒャルトは友人から「弟子をひとり引き受けてくれないか」と頼まれます。その弟子とは、才能あふれる女性歌手パウリーネ・デ・アーナ。リヒャルトは彼女をオペラの歌手として起用できるまでに育て上げ、最初のオペラ「グントラム」に彼女を起用します。この作品は歌手にとって歌うのが大変な曲だそうですが、パウリーネは文句のつけようがないほど見事に歌いました。そのため、リヒャルトはリハーサルの時に上手なパウリーネを放っておいて、他の歌手に多く注意を与えていたそうです。放っておかれたパウリーネは「なぜ私に注意してくださらないの?」と言ってリヒャルトに譜面を投げつけたとか。二人はこの年の9月に結婚することになります。リヒャルトは30歳、パウリーネは33歳、姉さん女房ですね。リヒャルトはパウリーネのことをとても愛し、「四つの歌曲」等彼女のために多くの歌曲を作っています。


今、彼の「変容=メタモルフォーゼン」を聞きながらこの駄文を書いているのだが、ナチスドイツ崩壊によって失われた古き良きドイツへの思いが結晶したといわれるこの作品、実は財産を無くしててこれからの妻子との暮らしを案じる気持ちも込められているのではないか。せっせと蓄えた財産←イギリスに置いていたという話を昔聞いたが裏を取れず、を失った愛妻守銭奴を思えば感ひとしおである。