天井桟敷日記

「天井桟敷からの風景」姉妹版

モーツァルトの死生観

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昨日の阪大ワンコインコンサートで知ったモーツァルトの手紙。

ドン・ジョヴァンニ」の作曲を開始したとほぼ時を同じくして、ザルツブルクでは父レオポルトが病に倒れた。これを知らされたモーツァルトはレオポルトに4月4日付で自分の死生観を織り込んだ書簡を発信するのである。
《あなたご自身から快方に向かっているという安心の手紙をぼくがどれほど切望しているか、お伝えするまでもないでしょう。常にぼくはあらゆることに最悪を想定することに慣れてはいるのですが。 死は(厳密に言えば)ぼくらの人生の真の最終目標ですから、ぼくはこの数年来、この人間の真の最上の友とすっかり慣れ親しんでしまいました。その結果、死の姿はいつのまにかぼくには少しも恐ろしくなくなったばかりか、大いに心を安め、慰めてくれるものとなりました!そして、死こそぼくらの真の幸福の鍵だと知る機会を与えてくれたことを(ぼくの言う意味はお分かりですね)神に感謝しています。ぼくは(まだ若いとはいえ)ひょっとしたらあすはもうこの世にはいないかもしれないと考えずに床につくことはありません。でも、ぼくを知っている人はだれひとり、ぼくが不機嫌だとか悲しげだとか言えないでしょう。そして、この仕合わせを毎日ぼくは創造主に感謝し、隣人のひとりひとりにもそれが与えられるよう心から祈っています。(中略)ぼくがこの手紙を書いている間にも、あなたが快方に向かわれるよう願い望んでいます。》
★この手紙がモーツァルトが父レオポルトに宛てた最後の手紙となったのである。尚、この手紙に記述されている死生観はフリーメイソンの思想から来ているとされている。
http://amadeusplace.blog.so-net.ne.jp/2010-10-07

「死こそぼくらの真の幸福の鍵」とは凄い言葉だ。コンサートは「橋本 京子ピアノリサイタル:モーツァルトの影の世界」
https://sites.google.com/site/concertb252/2017niankonsatosukejuru/hashimotokyoko2017
と題するものでモーツァルト短調の曲に影の世界を聴こうというもの。聴いてて山上憶良「世間(よのなか)を憂(う)しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」を想起した。

凡人にはモーツァルトのような死生観は持てないがせめてモーツァルトの明るく楽しそうな音楽の中に影を聴き取るようにしよう。飛び立ちかねつモーツァルトを聴き直すきっかけにしたい。