天井桟敷日記

「天井桟敷からの風景」姉妹版

遠藤周作「深い河」消化不良

f:id:doyoubi92724169:20170422054700j:image遠藤周作「深い河」を昨日読了。様々な事情を抱えてインドに旅した五人の日本人が主要登場人物。一番、興味を持ったのは五人の中の唯一の女性、美津子。
良家のお嬢さんに生まれ奔放な学生時代を過しながらも俗物金持夫と見合結婚、しかし俗物に耐えられず離婚。学生時代に弄んだ神父を目指す不器用純情男が何故か気になり、インドで再会。ところが不器用純情男はつまらぬ野心家男の身代わりとなって暴力を受け、危篤となって物語は終わる。

この美津子、偽善を嫌い、ほんとうの何か、愛をずっと求めているから、それを得ているように見える不器用男←イエスの象徴がずっと気になっているのだが、不器用男の危篤に接してどうしたろうか、それは読者が勝手に考えよという趣向だ。

美津子がガンジス河に沐浴して回心という展開を期待して読んだのだが肩透かし。ホスピスボランティアをしても真似事、沐浴も真似事と考えてしまう美津子、真似事と考えなければいいのに、奔放に見えて実は潔癖に過ぎるのかもしれない。

では作者キリスト者遠藤周作は真似事ではない人生を生きたのだろうか。そしてまた俺は美津子の如く偽善を嫌い生きて来たろうか。そんなことを思いながらの消化不良読書だった。

様々な事情を抱えて人は生きて死ぬ。そして人は確実に死に、死者を分け隔てなく受け入れるガンジス河。ヒンズー教を少し勉強所存。

 

画像はヒンドウーの死の女神チヤームンダー、小説の重要なキーとなっている。

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