マドリード レアル劇場公演 歌劇 「ベニスに死す」(0:03:00~02:43:00)
プレミアムシアター録画。面白そうなので鑑賞前に予習。
<演 目>
歌劇「ベニスに死す」(全2幕)(ブリテン)
<出 演>
アッシェンバッハ: ジョン・ダザック
旅人/年配のだて男/ゴンドラの老船頭/ホテルの支配人/ホテルの理髪師/流しの楽師のリーダー/ディオニソスの声: リー・メルローズ
タジオ: トマシュ・ボルシュジェク
アポロの声: アンソニー・ロス・コスタンツォ
旅行社のイギリス人社員/ベニスのガイド: ダンカン・ロック
物乞い: イトシャロ・メントシャカ
ホテルの案内人: ビセンテ・オンブエナ
ガラス職人: アントニオ・ロサーノ
ウェイター: ダミアン・デル・カスティーヨ
レース売りの女: ヌリア・ガルシア・アレス
イチゴ売りの女/新聞売りの女: ルス・イニエスタ
<合 唱>レアル劇場合唱団
<管弦楽>レアル劇場管弦楽団
<指 揮>アレホ・ペレス
<演 出>ウィリー・デッカー
<字 幕>三井章子
収録:2014年12月 マドリード・レアル劇場(スペイン)
ヴィスコンティ映画、原作との比較など為になる記事→加藤邦宏作品ライブラリー: エッセイコーナー
ブリテンのオペラ化に関して、もっともすぐれた着想と思われることがあります。それは、アッシェンバッハにからむ主要な脇役が七人いるのですが、これがすべて一人の歌手によって演じられるというか、歌われるという点です。すなわち、最初にアッシェンバッハに旅情をかきたてる未知の旅人、船に乗りあわせた若作りの老人、ゴンドラの船頭、ホテルの支配人、ディオニソス、ホテルの床屋、流しの音楽家、以上の七人です。
これらの人物は、アッシェンバッハに執拗につきまとって彼の罪悪感をかきたてたり、彼の欲望をそそのかしたり、彼の神経を逆なでしたりします。これらの脇役はアッシェンバッハの自閉症的な行動を強化する働きをするのですが、異なる配役に同じ顔の人物が登場することによって「またあいつか」という主人公の強迫観念がいやがうえにも高められます。この強迫観念は見ている私たちにも伝わってきます。
なおオペラに登場するアポロとディオニソスという二人の脇役は、純粋にオペラ用に作られたもので、原作には登場しません。アポロ役は、イギリス伝統の男性アルトが当てられています。映画がモノローグを徹底的に排除しているのに対してオペラは徹底した主人公のモノローグで展開されます。実質一時間以上、難曲を歌い続けるのですから、普通のテノール歌手ではとてもこの役はつとまりません。
予習はとりあえずこの程度にしておく。
第一幕終了。音楽に所々ブリテンらしい才気を感じるけどやっぱり辛気臭いオペラ。
「完璧な美に触れることにより言葉にエロスが宿る」がメッセージとしておく。